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2006年02月27日

赤目四十八瀧心中未遂

以前、本屋をブラブラしていたら、「最後の私小説」という文字が目に飛び込んできました。タイトルではなくて本の帯かなんかのコピーですが。「私小説」、まだ私小説とか書いてる人がいるのかな、と思って手にとったのが車谷長吉という小説家の本です。ワタシ、恥ずかしくも小説というか文学というものは、私小説から入ってます。太宰治とか檀一雄とか島尾敏雄とか。あー、逃げないでください。なんにもしませんから。
最近はもう読んでません。物理の本とか宇宙の本とかばっかりで、小説だってふつうの人が読む本を読んでます。「東京タワー」とか「空中庭園」とか「半島を出よ」とか。いや、白状します。車谷長吉の前に佐伯一麦という人の「鉄塔家族」とか読みました。これも私小説だと思います。すみません。いや、勝手に謝ってすみません。
私小説というのはなんで忌み嫌われるんでしょう。忌み嫌われてないかもしれませんが。車谷氏に言わせると、私小説なんか書くのは業というか、そんなヤツは悪人というか、書いてても苦しくてしょうがないそうです。事実、車谷氏、貧困と放浪の挙げ句、幻覚を見るようになり、強迫神経症を煩い、病院通いすることになってしまいます。それで「このままでは死んでしまう」ので、「私小説はもうやめよう」と一大決心し、何度か落とされた芥川賞をあきらめて、直木賞狙いで書いた小説が「赤目四十八瀧心中未遂」。これが見事直木賞を授賞し、映画にもなったというわけです。
「赤目四十八瀧心中未遂」、小説の方は文章がかっこいい。かっこいい文章だと思います。内容は大阪心中モノです。それを読んだ荒戸源次郎が「ぜひ私に映画化を」と言い、寺島しのぶが「映画化する時はぜひ私にあやちゃん役を」と言ってきたそうです。それで荒戸源次郎監督、寺島しのぶ主演で映画化され、03年の毎日映画コンクール日本映画大賞と、ブルーリボン賞作品賞を授賞し、主演女優賞とか助演女優賞とか新人賞とか撮影賞とかモロモロモロモロ授賞し、ワタシが今頃DVDで観たりしているというわけです。
荒戸源次郎、原作に惚れ込んだためか、内容はほとんど変えていません。結局、「心中未遂」なので心中は思いとどまります。そして帰りの電車の中で男だけ残して、突然、女、あやちゃんは電車を降りてしまう、小説も映画もそれがエンディングです。そのあとあやちゃんはどうしたのか。ポスターだったかパンフだったかには滝壺に白い女が浮いている。それが荒戸源次郎が考えた結末なんでしょう。

投稿者: いがらしみきお | カテゴリー: ドラマ

2006年02月21日

ジャーヘッド

最近、映画雑誌とかあまり買わないので、「ジャーヘッド」がどういう映画なのかも知りませんでしたが、映画館で予告篇を観たら、監督が「アメリカン・ビューティー」と「ロード・トゥ・パーディション」のサム・メンデスなので行ってきました。これはイラクがクェートに侵攻した時の湾岸戦争を描いてます。
アメリカ海兵隊の新兵が主人公で、本国での訓練風景からはじまるというと、当然キューブリックの「フルメタル・ジャケット」を思い出すわけですが、乱暴に言ってしまえばこれはサム・メンデス版、または湾岸戦争版「フルメタル・ジャケット」です。そう言われてもサム・メンデスがムクれることはないと思いますが、ムクれたらすみません。
冒頭で「一度人を撃った人間は一生その感触を忘れることはない」みたいなメッセージが出てきます。ウロ覚えですが。それがこの映画のテーマかというと、たぶんそうなんでしょう。しかし、この映画のキモは主人公の上官であるサイクス三等陸曹の言うセリフです。「オレはこの仕事が好きなんだよ」「だってこんなもの見られる仕事が他にあるか」、そのセリフのあとに、炎上する油田の地獄のように美しい光景を映します。ですから、この映画、「兵隊にならないと見られない映像」をいくつか見せてくれます。
地獄に行ったことはありませんが、「地獄のように美しい」と形容するしかない映像というものがあります。湾岸戦争で言うならば、夜のバグダッドの空爆を映した暗視カメラの映像でしょう。ワタシは燃えさかり爆発する太陽の映像をはじめて見た時もそう思いました。そして原水爆のキノコ雲の映像です。ワタシは核実験の写真集を持っていますが、誤解を恐れずに言えば、これは人間が作り出した最も「地獄のように美しい」景色だと思います。この写真集を見ていると、この景色見たさに人間はまたどこかで核爆弾使うんじゃないかという気さえしてきますが。
ワタシが今一番見てみたいのは、ブラックホールです。ブラックホールがあらゆるものを呑み込んでいる映像というものを見てみたい。ましてや、それを生で見れるんなら、ワタシはそのあとブラックホールに呑み込まれて死んでもいいとさえ思ってるんですが、生きて帰れるんなら、もちろんその方がいいです。

投稿者: いがらしみきお | カテゴリー: 戦争

2006年02月14日

ミュンヘン

スピルバーグの「ミュンヘン」です。いや「スピルバーグのミュンヘン」というタイトルじゃないですよ。あははは。昔は「スピルバーグのグレムリン」とか、スピルバーグはプロデュースしただけなのに、タイトルになんでもかんでも「スピルバーグの」がついたもんですが。
知らない人のために言っておきますが、1972年のミュンヘン・オリンピックでイスラエル選手団11人がパレスチナゲリラに監禁された挙げ句、全員射殺されるという事件がありました。そしてスピルバーグはユダヤ人です。そこに因縁を読みとるなと言っても、「シンドラーのリスト」の時を見るまでもなく、それは無理というものでしょう。
スピがミュンヘン・オリンピックのテロ事件を撮るらしいというニュースを聞いた時、あんなのどうやって映画にすんのよ、と思った記憶がありますが、スピルバーグはテロ事件そのものよりも、なるほど、イスラエルの情報機関モサドがテロ事件に関わったゲリラたちに報復するドラマの方を撮ってます。これはどう考えても復讐ドラマです。しかも某映画雑誌によるとバイオレンスたっぷりだそうで、「来るな」と言っても、血の匂いを嗅ぎつけたワタシの耳にはもうなにも届かず、夜の闇に放たれた一匹の野獣がジリジリとシネコンに近づいて行くのでぃした。ぐふふふ。
スピとバイオレンス、前回の「宇宙戦争」では完全に肩すかし食わされたので、今回もやっぱり半信半疑でしたが、一応やってました、バイオレンス。特に新しい驚きはないものの3時間弱のドラマながらワタシは居眠りもせずに完走しました。だけどほんとにモサドがこんなナイーブなヤツをこんな重要な任務につけるかな。モサド最強論者の落合信彦先生が見たら怒り出すこと必定。見ようによってはこの映画、単身赴任スパイ残酷物語でしかない。そしてエンディングには「暴力は暴力しか生み出さない」というメッセージとともに、9.11に消失した貿易センタービルのツインタワーを遠景に出してきます。この演出はベタです。しかし、それ以上にベタなのは「暴力は暴力しか生み出さない」というメッセージでしょう。もしなにかメッセージとか言いたい人は、そのメッセージもちゃんと自分で考えてよ、というのがワタシの持論です。これでは「暴力は暴力しか生み出さない」というメッセージを考えた人のパクリであるばかりか、「暴力は暴力しか生み出さない」という言葉をますます陳腐にしてしまう行為でしかないと思います。それ以上に、我々は「暴力は暴力しか生み出さない」ということをもうわかっている。ウンザリするぐらいわかっているのにどうやってもそれを変えられない、それが我々の現実であるはずです。これでは、飢えて今すぐ死にそうな子供たちをテレビの前に座らせて、例の3秒に1回指パッチンしてみせる有名人の映像を見せてやるのとどこがちがうのか。スピのバカ。
アジアの映画をハリウッドでリメイクするのが流行ってますが、この「ミュンヘン」、パク・チャヌク監督に復讐3部作海外編として逆リメイクしてもらいたいもんでぃっす。

投稿者: いがらしみきお | カテゴリー: ドラマ

2006年02月10日

亀は意外と速く泳ぐ

いつも簡単な近況から入ろうと思ってるんですが、残念ながらワタシには近況というものがありません。最近は特に忙しかったので近況がまったくない。だからいきなり本題に入ります。
蒼井優を見ようと思って「亀は意外と速く泳ぐ」を借りてきました。蒼井優はあんまり出てなかったんですが、上野樹里がいいですね。三木聡監督の作品ははじめてですが、こういう才能の人はふつうは漫画家になったもんです。今はテレビとか映画の方に行ってしまうんでしょうか。
「脱力系」というか「ゆるゆる」だそうで、確かにツッコミがない映画です。ワタシもツッコミのない漫画を描いたことがありますが、その時はだんだんつらくなりました。ひとり遊びに近い世界になるもんで。
それにしても上野樹里って昭和っぽいです。上野樹里だけじゃなくて、この映画は丸ごと昭和っぽいんですが。出てくる風景や出演者や小道具がみんな昭和っぽい。たぶん監督のプランなんでしょう。
最近は昭和ブームなんでしょうか。「ALWAYS三丁目の夕日」とかも昭和でしたね。あと「男たちの大和YAMATO」も。いや「YAMATO」は違うだろ。あははは。
平成も18年だそうで、昭和が終わってからもう18年もたつんですね。みんなそろそろ昭和を懐かしむのも無理はないでしょう。
ワタシにはともだちと言える人間が三人いて、そのうちの二人はもう死んでしまいました。ワタシは朝風呂なんですが、毎朝、窓を開けて露天風呂気分で入ります。そしてその時に見る空を二人がまだ生きていた頃の空として見ます。最近は訓練の甲斐あって瞬時にそれができるようになりました。あー、アイツら今日はなにしてるかな、とか思いながら見るその時の空はまさしく昭和の空です。

投稿者: いがらしみきお | カテゴリー: コメディー

2006年02月04日

悪魔の棲む家

ワタシ、どんなに食欲がなくてもホラーだったら観られる、という体質ですので、リメイク版「悪魔の棲む家」を観てきました。いっしょに行った嫁さんと子供は「フライト・プラン」を観てました。
「テキサス・チェンソー」につづいて、マイケル・ベイが制作する2本目のホラーです。「テキサス・チェンソー」が素晴らしかったので、「もしかして今度も…いやいやまさかな」という感じで行きました。
結果的には「まさかな」の方でしたが、「テキサス・チェンソー」の監督だったマーカス・ニスベルだったら次もホラーを撮るかもしれないですが、この「悪魔の棲む家」の監督のアンドリュー・ダグラスという人はたぶん撮らないでしょうね。痛いシーンを痛く撮れる、汚いシーンを汚く撮れる、それがまさに才能なんだと思うんですが、ワタシ、この人そういう才能がある人には見えません。
みなさんはワタシを「気むずかしい映画ファン」だと思いますか?自分では「とても気むずかしい映画ファン」だと思います。あるオペラファンの人は、ファンである余り、マイナーなものばかり観るいやな客になりたくないのでメジャーなものも観に行くようにしているとか。ワタシだってちゃんとメジャーなものも観てます。「宇宙戦争」とか「キングコング」とか。「男たちの大和」は観ませんが。あははは。
ワタシは「いやな客」ではない自信はあります。ほんとはもっともっと誉めたいんです。ほんとです。だったらいいところを見つけて誉めればいいかもしれませんが、そういうのはなんだかキャバクラとかに行って、オカネ出して一生懸命女の人を誉めて喜んで帰ってくるみたいなもんで、ワタシはお酒飲めないのでそういう気持ちがさっぱりわかりません。しかし、おもしろいものかおもしろくないものかの、自分なりのではなくて、公正な判断については自信があります。ほんとです。
それでワタシが前回ケナした「フライト・プラン」、嫁さんと子供は大層おもしろかったそうで、「これはヒットするんじゃないの」とまで言ってました。事実ヒットしてるみたいですが。「じゃぁ、これ「私の運命を変えたオンリーワンシネマ」になった?」とか聞こうとしたんですが、雪も降ってきた夜のシネコンのだだっ広い駐車場でそんな質問したら、ただただうるさがられるばかりなので、無言でウチのクルマ目がけて走るワタシでした。
ワタシと嫁さんが意見の一致をみたのはジョディはもうおばあさんになっていたということだけです。

投稿者: いがらしみきお | カテゴリー: ホラー