2007年08月31日

インランド・エンパイア

8月はお盆ですのでね、家族を連れてちょっと東京へ。久々の家族旅行です。それで、子どもに行くところを決めさせたら、原宿とアキバだと言う。少し文句を言いましたが、ここ1年以上はどこにも連れて行けなかったので従うしかない。ワタシとしては「家族で新幹線に乗りたい」というのがささやかな望みでした。しかし、そんなささやかな望みは行きの新幹線で早々と達成されてしまい、トーキョー、トーキョー、終点でーす。これからワタシはなにをすればいいの?と思っていたら、東京、まったく暑い。8月の東京は燃ゆるようですのす。
とにかくホテルへ直行。名前は出さないけど、いいホテルです。あのくだらないシャワーカーテンというものがない。ウチの嫁さんはホテル好きなので、どこに行くでもそれなりのホテルじゃないと納得しません。ルーム・サービスで昼飯を食べると、嫁さんと子どもは原宿へ。ワタシまでついて行くと二人ともいやがるので、携帯で映画を検索してみたら、リンチの「インランド・エンパイア」をやっている。というか、時間的にそれしかなかったので、ひとり恵比須へ。
「インランド・エンパイア」は、リンチのリンチによるリンチのような映画らしいので、あまり興味はなかったんですが、やっぱり寝てしまいました。隣のおねえさんなんかもっとひどい。はじまる前から寝てました。あははは。
というわけで途中で出て来てしまいましたが、こんな映画に超満員、東京は異常です。まぁ、みんなリンチが好きなのかもしれませんが、リンチが好きな人がこんなにいる都市はやっぱり異常だと思います。しかし、リンチは他に撮りたいものがなかったんでしょうか。たぶんなかったんでしょうね。
この「映画ゾンビ」、お気づきでしょうが、最近はワタシの身辺雑記がほとんどで、映画について述べている部分が少なくなってしまいました。映画はもう語るものではなくなったと言えば、そのとおりなんですが、それは毎度同じく音楽も漫画もそうです。もしかすると小説も。それはたぶん我々はもうみんな呪いが解けてきたからでしょう。誰が呪いをかけていたかと言うと、映画であり、音楽であり、小説であり、漫画ですが。そして呪いが解けてくると、人は平気で人を殺すし、オカネ儲けに走るし、その辺に寝そべるし、人の言うことを聞かなくなります。では誰が呪いを解いてしまったのか、一口で言えばコンピュータです。そういう状態をガマン出来ない人が、美しい国とか、品格とか言い出します。ワタシもイヤですが、もう少し見守るべきだと思います。せっかく呪いが解けてきたんですから。呪いなんかなしに生きて行けるのなら、それが一番いいはずです。さて、人は呪いなしで生きて行けるのかどうか。
えー、「映画ゾンビ」、今回でひとまず終わりたいと思います。これまで読んでくれていた方々に感謝します。近々、新しい企画をはじめますが、今度は述べてもしょうがないことを述べようかとか考えながら東京から帰ってきたのす。

投稿者: igarashimikio | カテゴリー: サスペンス

2007年08月08日

ゾディアック

またまた取材に行くことにしました。ワタシの連載漫画の中で「ほやうどん」という料理を出したんですが、別件で検索かけていたら、地元宮城県で「ほや祭り」というものが7月にあり、その開催地には「ほやうどん」を出す寿司屋があるらしい。さらに近くのお店には、なんと「ほやラーメン」さえあるとか!
ほやに目がないウチのスタッフは、「この前、ほやそばを自作してみました。うまかったですよー、ほーら、これがその時の写メです」、「ほや祭りのほやのつかみ取りってどんなもんですかねー、ねーねー、どんなもんですかねー」などと、ハヤル気持ちを押さえきれないのがアリアリで、超強力台風が近づいているというのに、スケジュールにぶっ込みましたよ、「ほや取材」。こうして梅雨のまっただ中、台風一過の奇跡的な晴れ間が広がった朝、我々は軽自動車3人乗り片道2時間の旅に出発したのす。
ワタシのプランはこうでぃっす。昼頃、現地に着き、まずほやラーメンを賞味、腹ごなしに「ほやまつり」に出かけて、ほやのつかみ取りに挑戦!そしていよいよ本題のほやうどんへとなだれ込むぅ!!いやー、道さえ夏の日差しに白く輝いて、まるで夏休みに親類の家に泊まりに行く小学生のような気分でした。あははは。
おぉーっ、海だっ海だっ、海が見えて来たぞー!人間というのは、なぜか海が見えて来ると盛り上がるもんで、2時間の単調なドライブの果てに見えて来た海で気分もアゲアゲ。この辺だろ、「ほやうどん」の寿司屋は、などと言っていたら、苦もなく見つかりました。しかも、その隣が「ほやラーメン」のお店らしい。オオーッ!驚喜しつつ、まずは「ほやラーメン」から。え?これが入り口?、ふつうの家じゃないの?入ってみたら、ばあちゃんがひとり座っていて、テレビ観ながら「地震たいへんだごだねー」とか、「今日はほやラーメン16杯目だよ」などと言いながら、どっこらしょっと調理場へ。というか、台所へ。我々が座ったのは、ちょうどトイレの前。スタッフUの後日談で、「我々はトイレの臭いのするところでほやラーメンを食べていたのではなく、トイレの中で食べていたのです」との名言を引き出すこととなったのでした。味については…まぁ、いいじゃないっスか。
そのあと「ほやつかみ取り」が出来るという会場へ行ってみたら、そんなものやってる気配がまるでなくて、ギョリュウなんたらいう化石とか飾ってあるのを見てうらぶれた気持ちになり、テトラポットの海を見ながら、さびしく腹ごなししておりました。そして気を取り直して、本命である「ほやうどん」へ。
行ったら、いきなり「もうやってません」と言われ、真っ昼間っからビール飲んで赤黒い顔した地元のケンドー・コバヤシと清原を横目に、我々は海鮮丼のヤケクソ食いに走ったのでした。腹痛えー。田舎のバカー!グッスン。
え?「ゾディアック」はどうなった?、アレはね…うん、もういいでしょー。

投稿者: igarashimikio | カテゴリー: サスペンス

2007年07月12日

サイボーグでも大丈夫(後篇)

そして翌朝、パク監督が泊まっている銀座のホテルへ。
なんでもブラピとかマイコー・ジャクソンとかも泊まるところらしく、田舎者には目の毒ですじゃ。控え室で待つ間、スタッフの人に、パク監督がワタシの漫画から影響をうけたことを示すエピソードを聞く。あまりのことなので聞いた途端に爆笑する。あまりのことなのでとてもワタシの口からは言えません。ぎゃははははははは。
笑いながら待つこと20分、いらっしゃいました、天才パク・チャヌク!!おぉー、本物だ!本物だ!アンニョンハセヨー!パンガブスムニダー!
竹書房の人から、「復讐者に憐れみを」で「ぼのぼの」のテレビアニメを無断引用されたことを、「最初にガツンと言ってやってください!」などと言われていたので、ホニャヘララ~と言ってみると、パク監督、その件はとても気にしてたみたいでした。いい人です。
その後は、韓国語通訳の優れたお方と、日本語筆記通訳担当のK君のお陰で、対談はなんとか進行するも、ワタシはとっても舞い上がってたみたいで、「ワタシ」「ボク」「オレ」「オラ」などの一人称が混在する結果になりました。みっともないです。いやいや、「オラ」とかは言いませんでしたが。途中、「オールドボーイ」のイ・ウジン役のユ・ジテが、突然ドアを開けて乱入してきたので、日本人一同凍りついていると、パク監督と「おー、来てたのか」「はい、仕事で」「晩飯でも食おうぜ」「あとで電話します」ような会話が交わされ、ユ・ジテ、あっと言う間に退場。あー、びっくりした。ユ・ジテ、またピストルで自分の頭ぶち抜くのかと思いましたで。
ひとまず対談をすませると、ランチをごいっしょしにホテルの外へ。行ったところはオバアで満員。オバア、うるせい!飯を食いながらどんな話をしてたかというと、パク監督も一人娘、ワタシも一人娘、お互いむずかしい年頃の娘を持つ父親として、身につまされる話とかしてましたです。ホテルに戻ると、サインを交換し、あぁー、なんとワタシは幸せ者だ、と思いましたよ。ひさしぶりにちょっと胃が痛くなりましたけど。あははは。
「復讐者に憐れみを」、「オールドボーイ」、「親切なクムジャさん」と、世界の映画史に残る激烈復讐三部作を完結させたパク監督、今度は出来るだけ遠いところに行ってみたかったんでしょう。それが「サイボーグでも大丈夫」。これをしてラブ・コメだという人もいるかもしれませんが、予告篇を観たらみんなそう思うでしょうね。そして頭の中で「ははーん、あの線なのね」などと、あらまほしき映画を思い描くでしょうが、あなたの予断は一切覆されます。これはパク監督の映像を作り上げる力を思い知る映画です。こんなの作れるのは世界中で三人しかいません。「嫌われ松子の一生」中島哲也、「アメリ」ジャン=ピェール・ジュネ、そしてパク・チャヌクっス。
「サイボーグでも大丈夫」、ピもかわいい、イム・スジョンもかわいい、かわいいかわいい映画です。まさにギザかわゆるっス。パクさん、またどこかで必ずお会いしましょう。

投稿者: igarashimikio | カテゴリー: ファンタジー

2007年07月03日

サイボーグでも大丈夫(前編)

めずらしくまた東京でした。今回は「オールドボーイ」で知られる韓国のパク・チャヌク監督と会うためです。新作「サイボーグでも大丈夫」のプロモーションで来日するので、ぜひ会ってもらえないかとの話を受けたんですが、編集者とか広報の人というのは、時として、片方には「あの先生があなたをとてもヒイキにしていて会いたがっている」、また片方には「昔からの先生の大ファンだそうなので、ぜひ一度会ってやっていただけませんか」などと方便を言っては、無理々々としたセッティングをされてしまうことがあるので、今回もその線なのではないかと疑ったんですが、パク監督は「復讐者に憐れみを」で、「ぼのぼの」のテレビアニメを挿入していたことは、この目で観て知っているので、あながちデタラメとばかりも思えない。そしてなにより、ワタシがパク監督の大ファンだというのはまちがいないので、ノコノコ行きましたよ、東京へ。
なんか最近こればっかり言ってますが、ワタシは耳が悪いので、対談とかテレビ出演とかの仕事はだいたい断っています。しかも今回は通訳の人が間に入るわけで、果たしてどんな混乱が巻き起こるのか想像もつかない。しかし、まぁ、誰か人が死んだりするわけじゃないんだからと思い、対談の前日は、別件の仕事を早々と終わらせると、浅草方面へフラフラと。浅草の路地をウロウロし、オープン・カフェならぬ、オープン飲み屋でまだ明るいうちから牛すじ突っつきながらビールをゴクリ。ご機嫌ですね、旦那。その後、一度乗ってみたいと思っていた念願の水上バスに乗ったり、築地で寿司食ったりしてました。楽しい、楽しい。あははは。
水上バスに乗って、いわば裏側から見る東京というのはスペクタルです。「よくもまぁ、こんなの作ったもんだなぁ」と圧倒されます。ローマは一日にしてならず、とか言いますが、日本人だったらローマぐらい三日で作っちゃうんじゃないでしょうか。あ、ごめん、ローマの人たち。
その夜は、明日のことを考えて、余力を残しつつ早々とホテルに戻りました。余力を残しつつベッドに横になったつもりが、余力なんかぜんぜんなかったのか、まだ10時前だというのに、コトンと寝入ってしまったとです。目覚めたのが11時過ぎ。ワタシはだいたい毎日二度寝睡眠なので、顔を洗って歯を磨くと、今起きたばっかりにもかかわらず、「さぁーて、寝るかー」とつぶやきつつ、ほんとに寝てしまいましたばい。
対面にいるおフランスっぽいオヤジが、「負けは負けだしねー」などと言っている。上家のセレブっぽいオバアも「払ってもらわないと」とか言う。ワタシが「あれ?千点100万円って冗談じゃなかったの?」と言うと、下家の女医っぽいねえちゃんが「冗談なわけないでしょ」とボソリ。「えぇーっ、じゃぁオレ3億6千万の負け!?」と叫びながら目を醒ますと、ホテルの窓からドンヨリとした東京の夜明けが見えました。
こんな馬鹿馬鹿しい悪夢を見るのは、麻雀で有名な竹書房がとってくれたホテルだからにちがいないなどと、さらにドンヨリした頭で考えていると、今日のパク監督との会談へも、なんだかギザドンヨリの暗雲が立ちこめるのす。さぁ、どうするワタシ!!
今回はパク監督に敬意を表して、「映画ゾンビ」はじまって以来の前後編コンティニューへ突入。

投稿者: igarashimikio | カテゴリー: ファンタジー

2007年06月21日

アポカリプト

先日、永島慎二先生の遺作展が阿佐ヶ谷であったので、ちょっと上京しました。日帰りというのも珍しいんですが、ひとりで行くというのも珍しいことです。なにしろワタシは耳が悪いので、「ひとりで東京に行く」とか言うと、みんな心配します。「ひとりで新幹線に乗る」とか言っても心配されるので、「ひとりで新幹線に乗って東京のホテルに泊まってくる」とか言ったら、もうたいへんなことになってしまいます。まるで小学生です。だからせめて日帰りというわけです。
永島先生というと阿佐ヶ谷です。ワタシも若い頃は、三鷹とかにも住んでいて、電車の窓から先生の住んでいる阿佐ヶ谷の街を眺めていましたが、畏れ多くて降りたことはありませんでした。それが52歳になって、はじめて阿佐ヶ谷の駅から、遺作展の会場の喫茶店まで歩いてみましたが、短い距離とは言え、なぜ先生が阿佐ヶ谷を大好きだったのか、少し理解できました。この街には生活があります。
いつもは丸の内とか千代田区とか渋谷とかばっかり歩いているので、そのちがいはあからさまなんですが、阿佐ヶ谷ではまったくみんなあからさまに生きているのでした。あからさまにオカネなさそうだし、あからさまに年寄りだし、あからさまに体が不自由だったり、あからさまに楽しそうな子どもがいました。それに生活の臭いもあからさまです。「匂い」ではなくて「臭い」。商店街というのはこんなにもいろんな臭いがするものだったかな、と思うほどです。いまや仙台にだってこんなに臭いのするところはないでしょう。そして、もしかしたら、この臭いはワタシが東京にいた30年以上前から変わっていないのではないかと思ったら、なんだか不覚にも涙が出そうになりましたです。
永島先生の絵はすぐ売り切れてしまいます。特に油絵は初日に売り切れてしまうそうです。耳が悪いワタシは、アイスコーヒーを頼んではトンチンカンなことを言い、絵を見せてもらってる間にもチンカントンなことを口走り、この絵が欲しいどうしても欲しいなどと、またカントンチンなことを叫んで、お店の方がすでに買ったものを無理矢理譲ってもらったりしたのはワタシです。すみませんでした、浜野さん。帰ってからもカンチントンな留守電でご迷惑おかけしました。そのうちお詫びがてら参上し、今度はゆっくりと阿佐ヶ谷を歩いてみたいと思っております。
メル・ギブソン監督の「アポカリプト」、前作「パッション」以来の、パフォーマンス・ムービーを期待して観に行きました。なにを思ったのか初老のカップルが多かったんですが、時々後ろを振り返ってみると、あまりの血も涙もないシーンの連続に、彼彼女たちは、捕虜が断頭台にひかれて行くシーンではその捕虜と同じ顔に、首を切断され断末魔の叫びを上げるシーンでは、今まさに断末魔の悲鳴を上げんとする人になっていました。あと、上映中に脱兎のごとく階段を駆け下りて出て行った若者がいましたが、二度と戻って来ることはありませんでした。あははは。これぞ映画です。まったくあからさまです。偉大なり、メル・ギブ。敬意を表して「パフォーマンス」という新しいカテゴリーを作りました。

投稿者: igarashimikio | カテゴリー: パフォーマンス