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#30 大地震

30.jpg地震が多いですね。スマトラ、ハイチ、ペルーと、日本だけじゃなくて世界中で地震が起きている。昔は「地震」というと日本が本場だったような気がします。他の国で時々起きる地震はまさに天変地異という感じですが、日本だとあくまで天災というか、3年に一度はなにか名前のつくぐらい大きな地震があったような。

地震はなにもしなくても来る時は来ます。ある日突然来る。しかも東海とか関東とか宮城県とかだと震度7~8ぐらいの地震がいつ来てもおかしくない状態だとか言われて久しい。なのに誰も逃げたりしないのは、とりあえずみんな逃げたりしないからだろうし、必ず家が壊れるわけじゃないからだし、自分が死んだりするとは思ってないからなんでしょうね。なんなんですかね、「自分だけはだいじょうぶ」という、なんの根拠もない自信というのは。

23歳の頃のワタシは田舎の印刷屋に勤めて、チラシとかポスターなんか作っていましたが、早く辞めたそうな顔をしながら、毎日きっかり15分遅刻して来るようなヤツでした。まったく社長とか同僚から見たら、ムカつくヤツだったのは間違いなくて、花見だの送別会だの忘年会があるとだいたい誰かにカラまれてました。カラまれては睨み合い、罵り合い、掴み合い、そのうち誰かが吐いたり正体不明になるとお開きになるのでした。だからワタシは今でも花見とか送別会とか会社イベントなんか大っきらいっス。はははは、悪いのは自分のくせに。

とにかく鼻持ちならないヤツだったのは間違いない。こんな商店街のオヤジっぽいチラシとか、役場っぽいダサダサのポスターとか、ふざけんなバカヤロー!!とか思いながら、仕事はしつこくマジメにやってました。

とは言え、仕事以外はサイテー野郎だったのは間違いなくて、こんなヤツ、ウチのアシスタントだったら3日でクビか、先生のワタシの方が辞めて出て行ってしまうでしょう。

毎日毎日、耳が悪いのを隠したまま聞こえてるふりをし、その辺で買った沖縄のTシャツを着ては沖縄万博に行って来たとかウソをつき、ちょっとムカつくと「来月で辞める」とか宣言して社長に給料を1万円上げさせ、客のクレームをロクに処理できない先輩をハナで笑い、今日から残業だと言われればいつもの15分の遅刻を30分にし、東にビンボーな子どもいれば目の前でタイ焼きをうまそうに頬張り、西に体の弱い人いれば隣でスパスパとタバコを吸い、南に疲れた母いれば晩飯はまだかと怒鳴りつけ、北にケンカしてる酔っぱらいがいれば火に油をそそぐようなことをしては殴られるのでした。

ワタシは早くクビになりたかったんだと思います。だったら自分から辞めればよさそうなものですが、なんか大義名分が欲しかったというか、言い訳が欲しかったんでしょう。なんの大義名分かというと漫画家になる大義名分です。なんの言い訳かというと、家族に対する言い訳です。クビになれば漫画を描かざるをえないだろうとか考えていました。つまり漫画が描けなかったわけですね、この頃。写メは当時のワタシです。あははは、こりゃ殴られるに決まってる。

そして6月のある日、宮城県沖地震が起きます。今まで経験したことのない縦揺れの中でパニクりながらも、天井の低い木造2階建てのその工場が潰れれば会社はなくなると思ったです。しかし、2階に積んである紙の山が雪崩れのような轟音を上げて崩れ、鉛の活字や物が散乱しただけで工場は無事でした。

まだ地震に騒然とした町の中を通って家に帰ると、ワタシの部屋の中は崩れ落ちた本とレコードやガラクタが散乱していました。もし、これが夜寝ているところだったらオレは間違いなく下敷きになったろうな、と思いながらも、また元あったところに本とレコードを突っ込みはじめるのでした。

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〝人生というのは過去にしかないものだと思っています。ものみな過去にあるのです〟
魂の漫画家・いがらしみきおが現代日本に放つ自伝的フォト&エッセイ! 「ぼのねっと」にて独占公開!

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