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#14 東京

14.jpg東京、好きです。「ぼのぼの」とか描いたり、地方に住んでたりするので、「自然の中で暮らすのが大好きな、エコでロハスで、なにも欲しがらない、なにも願わない人」みたいに思われてたりする場合があるんですが、昔から東京は好きです。「大好き」と言わないところがミソです。どんなミソだ。仙台味噌です。

ワタシにとって東京は希望です。きっと今も昔も。アルゼンチン人にとってのマラドーナみたいなもんでしょう。ちょっとちがうかな。でも考えてみてください。日本に東京がなかったら、と。相当退屈な国だと思いませんか。退屈ですよ、まるでアジアのその辺の国みたいです。どの辺の国か言ってしまうと、また角が立ったりするので。

東京を好きになったのは、たぶん中学生の頃でしょう。ワタシは永島慎二先生のファンだったので、その影響が大きいと思います。永島先生の漫画では、新宿の夜明けには鳩が飛び、電車はパアーンという音をさせながら走っています。この影響は大でした。いつかフーテンになって、夜明けの新宿に鳩が飛ぶのを見て、パアーンと音がする電車に乗るのだ、乗るのだ、と決めていました。決めてしまうとワタシの場合早い。高校も辞めちゃいました。そして上京となるんですが、それはまた後の話です。今は東京について。

東京のいいところは人がいっぱいいるところです。あと建物がいっぱいあるところ。それは間違いないでしょう。乱暴に言えば、文化とか流行とかはあまりいらない。むしろ東京から文化とか流行とかがなくなったらサイコーだとさえ思います。ただただ人がいっぱいいて、ただただ建物がいっぱいあるだけだったら、ワタシはきっと東京を「大好き」だと言うでしょう。

田舎で育った人間なので、人がいっぱいいるところや建物がいっぱいあるところ、そして灯りがたくさんついているところに弱い。弱いというか、そういうところに救いを求めます。人は結局、明るいところに行くとホッとするでしょう。もっと明るいところだったら気持ちが華やぐし、もっともっと明るいところだったら、まぶしくてしかたないでしょう。あははは。

ワタシの幼い頃の記憶に、夜の電車の窓から見た田舎の風景があります。もしかするとはじめて汽車に乗った時の記憶かもしれないです。とにかくその車窓から見える夜の農村のポツリポツリとした電球の灯りは魔術的でした。幼いワタシは「あそこにも人がいる」「あっちにも人がいる」と思ったです。それがなんだかとても頼もしかった。この世はそんなにさびしいところではないな、と思いました。

仕事で上京すると、いつも手配してもらうホテルの窓から東京を見ています。それはワタシがホテルに泊まる時の醍醐味です。そして今でも「あそこにも人がいる」、「あっちにも人がいる」、「この世はそんなにさびしいところではないな」と思うワタシはもう53歳っス。

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〝人生というのは過去にしかないものだと思っています。ものみな過去にあるのです〟
魂の漫画家・いがらしみきおが現代日本に放つ自伝的フォト&エッセイ! 「ぼのねっと」にて独占公開!

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