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#08 今日の夕焼け

08.JPGワタシの携帯には「今日の夕焼け」というフォルダがあって、そこには夕焼けの写メがちょうど40枚あります。もっとあるかと思ったら40枚でした。前の携帯の時は、正に「今日の夕焼け」状態で、いい夕焼けも悪い夕焼けもただの暗くなった空も、ほとんど毎日撮っていたので、あっと言う間にメモリがいっぱいになり、出来のよくない夕焼けから泣く泣く消去しつつ使ってました。夕焼けはいいです。まったくです。

吉本隆明という人が「最近の若い人は抒情というものがわからなくてかわいそうだ」というようなことを言ってたそうですが、もし、そのとおりならば、ほんとにかわいそうというか、痛ましいことです。ワタシが、この「ものみな過去にありて」でやろうと思ったのはまずペーソス、そして抒情でした。

抒情とはなんでしょう。抒情とは夕焼けを見た時に感じるその気持ちのことです。なんというか、感傷的で、厳粛にして、孤立した時間です。もっと言うと「この世界ってどうよ?」と、自分に聞き返す時でもあります。最近の若い人は、抒情がわからないから、すぐ癒しとか求めたり、物欲しげなバラードばっかり聞いたり、泣ける映画がいい映画だと思ってしまうのでしょう。あぁ、そんなもの抒情さえわかれば全部いらない。いらないのでっす。

では、抒情マスターであるところのいがらしみきおが、若い人にお教えする「あしたのジョジョー」、ぷっ、ダジャレっス。あなたもこれを読んで、一刻も早く幸せな抒情生活をおはじめください。

それでは「抒情のためのその一」。まず携帯いじるのをやめなさい。携帯はすべてを滅ぼします。コミュニケーションだの、「繋がっていたい」だの、誰かに吹き込まれたウソ臭いものによって、あなたの感情は今まさに絶滅一歩手前にあります。

「抒情のためのその二」、先のことを考えるのはやめなさい。考えるんなら過去のことです。昔あった楽しかったこと、悲しかったこと、未だにわからないこと、そういうことを考えるのがよいでしょう。未来なんてどこにもありはしないのです。厳密に言えば「現在」という時間も過去なのです。過去になってはじめて「現在」として認識出来るのです。

「抒情のためのその三」、人のいないところに行け!人のいない風景を見るのです。人がいたらそれはもう抒情ではない。抒情ではないのでぃっす!

さて、今回の写メ、これは東京は飯田橋での夕焼けです。ここには人が映っていない。しかし、夕焼けの反射した建物の一番上、右から3番目の窓、そこに誰かにいるのなら、その人はいったいどんな人だろう、と思うのが抒情というものの真髄でもあるのです。人のいない風景を見て人を想う、これが抒情というものの正体でしょう。

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〝人生というのは過去にしかないものだと思っています。ものみな過去にあるのです〟
魂の漫画家・いがらしみきおが現代日本に放つ自伝的フォト&エッセイ! 「ぼのねっと」にて独占公開!

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